録音ソース側とDAWソフト上、エフェクトはどちらでかけるべきか?

DTM・宅録において音源の録音~エフェクト処理の方法としては、大まかに
- 録音ソース側であらかじめエフェクトをかけて録音する
- 録音後、DAW上でプラグインエフェクトをかける
と、言った2通りの方法がある。
機種によっても違いはあるだろうが、キーボードには内蔵エフェクトとしてオーバードライブ系からディレイやリバーブがあらかじめ入っているケースが少なくない。ギター・ベース用のコンパクトエフェクターは、エフェクトごとに多くの種類があり無限の組み合わせが可能となっている。またヴォーカルを録音する際、アウトボードのイコラーザーやコンプレッサーを通してからDAW上に取り込む事も出来る。
が、これら外部のエフェクトを一切かけずダイレクト音をDAWに取り込んでからDAW上でエフェクトをかける、もしくは録音ソース側のエフェクトとDAWのプラグインエフェクトを併用する事ももちろん可能である。
楽曲製作はどちらの方法でも可能だが、
- 録音ソース側であらかじめエフェクトをかけて録音する
- 録音後、DAW上でプラグインエフェクトをかける
上記の2通りの方法では、録音~エフェクト処理の方法としてどちらが良いのだろう?それぞれのメリット・デメリットを詳しく見て行く。
録音ソース側でエフェクトをかけるメリット
キーボードなどに内蔵されているエフェクト、ギター・ベースなどのコンパクトエフェクター・マルチエフェクター、ヴォーカルを録音する際のアウトボード機材など、いずれを使用するにしても録音ソース側で(DAWに信号を入力する前に)エフェクトをかけて音源を録音する場合
- プラグインを起動させなくてよい(CPU負荷を下げれる)
- DAW上でどのプラグインエフェクトを選択するか迷う必要が無い
と、言ったようなメリットがある。
プラグインを起動させなくてよい(CPU負荷を下げれる)
あらかじめ録音ソース側でエフェクトをかける場合、DAW上でプラグインエフェクトを起動する必要が無いので、その分CPU負荷は下げれるだろう。したがって、「DAWで作業中にパソコンがフリーズしたり落ちてしまう」と、言ったような作業効率を下げてしまう要因を取り除く事が出来る。
ただ、録音ソース側であらかじめエフェクトをかけている場合でも、DAW上のイコライザーやその他エフェクトで微調整したりする場合もあるだろう。それでも部分的なプラグインエフェクトの立ち上げならば、録音素材に対して全てのエフェクトをDAW上でかける場合に比べてCPU負荷は幾分か抑えられる。
(そのプラグインエフェクトにもよるが)特にCPU使用率が高くなりがちな
- アンプシミュレーター
- ディレイ
- リバーブ
と、言ったプラグインエフェクトをDAW上で立ち上げなくて済むように工夫するだけでも、作業効率は上がるかと思う。
どのプラグインエフェクトをかけるか迷う必要が無い
あらかじめ録音ソース側でエフェクトをかけた場合、基本的にはそれ以上プラグインエフェクトをかける必要がないので「DAW上でどのプラグインエフェクトをかけるか」迷う必要が無い。
プラグインエフェクトと一口に言っても、かなりの種類がある。
ある程度経験を積んで「(このソースへの)コンプレッサーはこのプラグイン、ディレイはこのプラグイン」と、言ったようにあらかじめ「どのソースにどのプラグインエフェクトかけるのか」がある程度決まっているのなら問題は無いかと思うが、そうでない場合プラグインエフェクトは実機よりも気軽に様々なタイプのエフェクト・設定・プリセットを試せてしまう為、その分「どのエフェクトを使うか?どう言った設定にするか?どのプリセットを使うか?」と、言った迷いの時間も長くなる可能性は少なくない。
録音ソース側でエフェクトをかけるデメリット
ただ、あらかじめ録音ソース側でエフェクトをかけて録音する場合にはデメリットもある。
キーボードなどに内蔵されているエフェクト、ギター・ベースなどのコンパクトエフェクター・マルチエフェクター、ヴォーカルを録音する際のアウトボード機材など、いずれを使用するにしても録音ソース側で(DAWに信号を入力する前に)エフェクトをかけて音源を録音する場合
- 質感が合わない事がある
- 後戻りできない(出来ても面倒)
と、言ったようなデメリットが出てくる。
音源の質感が合わない事がある
例えば、
- 録音ソース→キーボードのみ
- トラック数→3トラック
- エフェクト→全てキーボード内蔵エフェクト
と、言ったように「同じソースに同じエフェクトを使用」した場合、音源の質感は揃いやすいが、
- 録音ソース→キーボード、ギター、ヴォーカル
- トラック数→各1トラック(計3トラック)
- エフェクト→キーボードはキーボード内蔵エフェクト、ギターはコンパクトエフェクター、ヴォーカルはアウトボードEQ&コンプレッサー
と、言ったように「各録音ソースに異なるエフェクトを使用した」場合、音源の質感がバラバラになってしまうケースが全く無いわけではない。
後戻りできない(出来ても面倒)
当然だが、録音ソース側であらかじめエフェクトをかけた音をDAWに1度録音してしまえばエフェクトのかかっていない「素の状態」に戻すことは出来ない。完璧なテイクが録れたとしても音が気に入らなかった場合、録音ソース側のエフェクトの設定をやり直して再び録り直さなければならないので、完璧なテイクが台無しになってしまう。
DAW側でプラグインエフェクトをかけるメリット
一方、素材を録音した後にDAW上でプラグインエフェクトをかけるメリットとしては
- 多くのプラグイン・設定・プリセット(様々なパターン)を試せる
- やり直しがきく
- 音源の質感を揃えやすい
と、言ったような点が挙げられる。
多くのプラグイン・設定・プリセット(様々なパターン)を試せる
先ほども触れたように、素材を録音した後にDAW上でプラグインエフェクトをかける場合、実機(アウトボード)や楽器内蔵エフェクトを使用する場合に比べより多くのプラグイン・設定・プリセットを試せる可能性は高い。
確かに、内蔵エフェクトだけでも充分な量を誇る機材もあるだろう。ただ、内蔵エフェクトの音が自分の好きな音で無い場合も少なくない。プラグインエフェクトの場合、個別に自分の好きなエフェクトを選択し買い足す事が出来るので、より自分の好みの音を追求する事が可能である。
また、例えば実機では高くて手を出せないようなエフェクトでも、実機をモデリングしたプラグインエフェクトならば価格も安くなり選択肢として現実的になるかと思う。
やり直しがきく
素材を録音した後にDAW上でプラグインエフェクトをかける場合、元々の録音素材(ダイレクト音)さえ残っていればプラグインエフェクトの差し替えはどれだけでも行う事が可能である。
例えば、ギターをダイレクトで録音しDAW上でエフェクトをかけて行く場合、大まかな手順は
- ライン入力でギターのダイレクト音をDAWに録音
- 録音素材に対しDAW上でアンプシミュレーターをかける
- 他プラグインエフェクトによる処理
と、言ったようになるかと思う。(場合によっては1と2の間にコンプレッサー)
例えば、「3.他プラグインによるエフェクト処理」を行っている最中に「アンプシミュレーターをやはり他のプラグインに変えたい」となったとする。
そのような場合でも、直列に並んでいるトラック上プラグインエフェクトのアンプシミュレーターをクリックし編集すれば、いつでもプラグインエフェクトの差し替え・設定の変更・プリセットの変更は可能である。
ただ、アンプシミュレーターに通した音を1度書き出してダイレクト音(元々の録音素材)のファイルをDAW上から削除してしまった場合、ダイレクト音のファイルを再びDAW上に読み込まなければならなくなる。アンプシミュレーターに限らず、エフェクトをかけた音をファイル書き出しした場合でも、ダイレクト音のファイルはDAW上から削除せず、残しておいた方が良いかもしれない。
また、プラグインエフェクトをかけた音を元々のダイレクト音のファイルに上書きするのは避けた方が良い。上書きすればダイレクト音のデータが無くなってしまい、プラグインエフェクトの設定のやり直しは出来なくなる。
パソコンの性能が良く、プラグインエフェクトをいくつも立ち上げても快適に作業出来るのなら、1回1回ファイルの書き出しを行う必要も無いだろう。
アンプシミュレーターは比較的CPU負荷が高くなる物が多く、複数立ち上げると快適に作業できなくなる為「アンプシミュレーターに通した音を1度ファイルとして書き出し、アンプシミュレーターををOFFにしてから作業」と、言う方法を自分は多用していた。
音源の質感を揃えやすい
素材を録音した後にDAW上でプラグインエフェクトをかける場合、全ての素材に対して共通のプラグインエフェクトをかける事が出来るので、ソースごとに別々のエフェクトをかけた場合に比べて全体的な質感は揃えやすい。
特に、ディレイやリバーブはトラックごと個別ではなく、AUXチャンネルをいくつか作成しセンドで送る事で、各トラックに共通のディレイ、リバーブをかける事が簡単に出来る。(トラックごと個別にディレイ、リバーブをかけるよりもAUXチャンネルに送った方が「プラグインエフェクトを立ち上げる数が少なく済む」と、言ったメリットもある。)
DAW側でプラグインエフェクトをかけるデメリット
素材を録音した後にDAW上でプラグインエフェクトをかけるデメリットとしては
- CPU負荷が高くなる
と、言った点が挙げられる。
CPU負荷が高くなる
素材を録音した後にDAW上でプラグインエフェクトをかける場合、どうしてもCPU負荷は高くなる。プラグインエフェクトによっても変わってくるので全てが全てでは無いが)先ほどから触れているように、特に以下のようなプラグインは比較的CPU負荷が高くなる。
- アンプシミュレーター
- ディレイ
- リバーブ
そして、当然だがDAW上に立ち上げるプラグインエフェクトの数が多くなればなるほどCPU負荷は上昇し、一定の数値以上になるとパソコンがフリーズしたりシャットダウンしてしまう。初心者がDTMを始めるにあたって必要な機材(物)一覧でも触れているように、ある程度スペックが高いパソコンでないと作業においてストレスを感じる事が多くなるかと思う。